エフィラ
words: yuko hanai
music: yuko hanai. masahiro watanabe
detail: masahiro watanabe

寒くはないし
暖かくもない

諦めたら?
誰も見てないから

I can feel it.
I can feel me.


諦めただけ
何も消えないから


『象牙色の岩壁が眼前10センチに迫っている。見上げるとそれはアーチを画い
てるように見え、明日にはまた別の形にたわんでいるのではないかと僕に思わ
せた。柔らかい岩壁はきっと生きている。そして今も僕を振るい落とそうと軋
んでいる。誰にも気付かれないようにひっそりと。日の方向を追い続ける向日
葵みたいに。

 僕は今それに片手でぶら下がっていた。

 下には今まで登って来た岩肌が見えた。上にも飽きる事無く続いている岩と、
それにしがみつき、上へと進んで行く何人かの友人が見えた。何度も同じ所に
手を伸ばし、手探りで少しづつ進んで行く友人達を他人事のように眺めている
と、何だか酷く滑稽に見えた。僕が今、この痺れはじめた片手を離せば、一瞬
で彼等の何倍もの距離を移動できるのだ。上に向かうのも、下に落ちるのも、
そう考えると結局は同じ事のように思えた。

 手の痺れは限界に近付いて来ていた。
 
 垂直の壁から垂れ下がる体にかかる重力、それは、はっきりと感じる僕を悩
ます死の恐怖だった。岩壁は見渡す限りは壁。厚い雲に覆われた象牙色は、そ
の境目が曖昧にぼやけていて、あの雲を掴まなければ僕は死んでしまうんだろ
うと思わせる。いや、きっと雲を突き抜ける程進まなければ助からないのだ。
 くっきりと見える死の恐怖。それは苦しい。しかし今、象牙色と雲の解ける
点の向こうを考えた時、具体的な恐怖、明確な悩みはむしろ希望に思えた。
 曖昧こそが真に恐ろしい。

 象牙色の壁は曖昧すぎた。僕は希望に向かって手を離した』